河川敷に暮らす人々

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先日、河川敷に暮らすホームレスの方々を支援するボランティアの見学をさせて頂きに、主人と二人で行ってまいりました。

パンとチーズを差し入れしながら、健康等に問題がないかどうかを聞いて回ります。
二手に分かれて回りますが、一通り歩くのに三時間くらいかかります。
もう何年も前から、二週間に一度のペースでこうした支援活動が行われています。
具合が悪くなっていて救急車を呼ぶケースもあるようですが、年に一人か二人は、亡くなっているのを発見することもあるということでした。
ホームレスの方たちに生活保護を勧めても、自己責任だから、人に迷惑をかけたくない、と言って、断る方が多いのだそうです。

ホームレスと言っても、働かない人というわけではありません。
ほとんどの人が、夜間や早朝、空き缶を集めてたり、廃品回収をしたりしているそうです。
遠くまで自転車で走って行って集めるのですから、かなりの重労働です。
ボランティアの方々に対する信頼もあるのだと思いますが、多くの方がとても愛想よく、「ご苦労様です、ありがとうございます」と、非常に丁重です。

皆さん、工夫をして、それなりに居心地良さそうに住んでいらっしゃいます。
土手にはきちんと階段が作られ、階段を上がると門には呼び鈴、ノブの付いた玄関には、もちろん鍵も付いています。
そうかと思うと、台の上にシート一枚を被って寝起きしているお爺さんもいるそうです。
雨の日もただシートを被って寝ているというのですから、すごい体力ですよね。
ボランティアの方が行くと、真冬でも、早朝、裸で乾布摩擦をしているそうです。

中には畑を作ったり、花壇を作ってお花を植えている方たちもいます。
とはいえ、台風で川が増水したりすると、流されてしまいます。
以前、きれいにバラを栽培している絵描きさんがいらっしゃいましたが、台風で丹精を込めたお庭を流されてガックリきてしまい、その後しばらくして亡くなってしまわれたようでした。

河川敷には犬や猫もよく捨てられるので、ご自身が食べる分を減らして、そうした動物を飼っている人たちもいます。
私たちが行くと、きれいな毛並みの犬が、大喜びで飛び出てきたりします。
数か所、集会場のような場所もあり、集まって麻雀をしている人たちもいらっしゃいました。


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多くの方は、ホームレスに至るまでに、様々な挫折や困難があったはずだと思います。
それでも自殺したりしてしまわないで、ホームレスになってでも生き抜くというのは、偉いとも言えるんじゃないか、と感心します。
「一人でそんな事になるくらいなら死んでしまいたい」と思う人が、世の中にどれだけいることでしょう。
昔、犬儒派と呼ばれたギリシアの哲学者は樽の中で生活しましたし、お坊さんの中にも乞食僧のような方がいました。
すべてを捨てて生きられるという点で、どこか通じてくる所があるようにも見えたりします。
シート一枚で生きられるお爺さんは、やっぱりすごい・・・。

いろんな花が咲き乱れて、果実が生る。一種、楽園のようにさえ見える場所もあります。

川沿いは、わりと古くからいる方たちが住んでいて、それなりに和やかな雰囲気ですが、新しく来た方たちがテントの中に籠っている橋の下は、なんとも荒涼としています。
何年か前に、中学生たちがここにいるホームレスを焼き殺した事件もあったそうです。
このような事は論外だとしても、大体日本人というのは、犯罪者に寛容なわりに、人生の失敗者だと思う相手には非常に厳しいですね。
人生が失敗するのを「自己責任」だと考えるのは、一般的かもしれません。

一人、まだ若い男性がテントにいらっしゃいました。
その方は、どうも字が読めないらしいのです。
それは、その人の「責任」なんだろうか?
いろんな事情があって、「責任」と言えることばかりではないと思うんです。

今年に入って、ここで首を吊って自殺をしてしまった人がいたとのことでした。
その方が書いたものらしいという文章が、壁に残っていました。

河原に架かる
橋の下にて眠る夜
吹く風の中から
聞こえてくる声に
私の魂は揺さぶられて
ねむれない

おとこのこえ
おんなのこえ

いっこよんひゃくえんの弁当をくすねたのは、
自分の責任だ
自分の責任だ
自分の責任を清算しろと
聞こえてくる



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人生の成功者と言われる人たちが黙って懐に入れる法外な額のお金は、本当に正当なものなのだろうか?とも思ってしまいます。


昔、パリに住んでいた事がありましたが、パリでは失業者の人たちに、普通に皆がお金をあげていました。
ある時、ノルマリアン(高等師範学校という超エリート校の出身者)の知人とレストランで一緒に食事をしていて、ジプシーの子がキーホルダーを売りに来ました。
すると、その知人はキーホルダーを買ってあげ、「私たちにはちゃんと仕事があるのだからね」と言うのです。
フランスのエリートには、自分たちが社会を支えていくのは当然だという自覚(いわゆるノーブレス・オブリージュ)が今でも生きているように思いました。


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ホームレスの支援のために作られた『ビッグ・イシュー』という雑誌があります。
イギリスで始められ、今では世界に広がっている雑誌で、有名人たちが掲載に応じています。
一冊三百円で、ホームレスの方たちが売っています。
うちでも、この雑誌は毎号買っています。
5月1日号には、宮本亜門さんと東田直樹さんという重度の自閉症の作家さんとの対談があって、面白かったです。
この作家さんは毎号、連載コラムを書いています。
最後の方に販売員さんを紹介するコーナーもあります。

主人と私の知っている販売員さんの中に、一人素晴らしい方がいらっしゃいました。
以前、目白の駅前にいらした年配の男性で、いつも雑誌を掲げながら不動の姿勢で直立し、晴々とした表情で、全身から清らかな気を漂わせている、それはきちんとした方でした。
去年、「清掃の仕事が正式に決まりました、今日で最後なんです」と言って、辞めていかれました。
私たちも嬉しい気持ちになり、帰りにコーヒーとドーナツを差し入れして、お別れしたのでした。




【追記】
その後お聞きしたところ、シート一枚で暮らしていたお爺さんはお亡くなりになっていたのが見つかったそうです。
ボランティアの方によると、まるでご自身を罰するように生きているように見えた、とのことでした。
保護を受けられるのを、硬く固辞していらしたそうです。

ご冥福をお祈り致します。


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2 Comments

silkribbon  

ビッグ・イシューは私も買ったことがあります。初めての時はなんだかドキドキしながら思い切って声を掛けて需めました。
内容はとても充実していて驚きます。
渋谷のハチ公前とかパルコの前とかで売っているのですがなかなか出会えないのです。日が決まっているのでしょうか・・・

2012/05/15 (Tue) 23:27 | EDIT | REPLY |   

Ariane  

Re: silkribbon さん

コメント頂きまして、どうもありがとうございます!
最初、ちょっと勇気が要る感じがしますよね。
販売員さんの都合でお休みを取られたり、休憩に行かれたりするので、いらっしゃらないことも結構あるようですね。前に目白にいらした方は、できるだけ売り場を離れないように、売り場で食事をしたりしていたようでした。販売場所は、ビッグ・イシューの最後のページに一覧があります。
既刊のもので興味がある特集などがあれば、販売員さんがバッグ・ナンバーを持っている場合も多いので、気軽にお尋ねになられると良いかもしれません。

2012/05/17 (Thu) 00:01 | EDIT | REPLY |   

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